ルーツ

ある3ヶ月ぶりのオフの日、
マサカズが友人と夕飯を食べに行った時の事。

その店で流れていたアイリッシュミュージックを好きだと言ったその友人に「これがMcKINLEYのルーツだよ」と言った。その答えにその友人は意外そうな顔をしていた。

マサカズは早口でこう言う。
「ちょっと説明させてもらっていいかな。アイリッシュミュージックは民族音楽なのは知ってると思うけど、これは歴史の中で侵略や宗教戦争を経験してきたアイルランド人が共通の癒しや平和への願いを奏でたものなんだよね。

それが世界的に評価されてアイリッシュミュージックというものが確立されるようになったんだけど、それはアイルランドの状況や言葉を知らない僕らが、心から奏でられる旋律に胸を打たれてきた過程の結果であって、アイリッシュミュージックが出来た時点の目的じゃない。逆にそれを目的としていたのならば、今の評価や音楽としての確立は無かったかもしれない。」

一旦落ち着きを取り戻すと、マサカズはこう続けた。
「僕らも同じことだと思わないか?アメリカンブルースがそうであったように、世界の民族音楽がそうであるように、McKINLEYの音楽は、僕らの持つ経験であったり、感情であったり、意思であったり、そこから流れ出る息遣いなんだ。

だから僕らはジャンルを問わないし、目に見える言葉で核心に迫らないのかもしれない。
けれど僕らは音楽を創り出す人として、戦争時代に音楽が人々の心に安らぎを齎したように、僕らの音楽にも人を救う力があると信じているんだ。僕らのことなんか何一つ知らない人にでさえね。」

帰り際、マサカズはその友人に一本のデモテープを渡した。
その中にはこの曲が録音されていた。

その友人にはその後、何度も僕らの音楽を聞いているうちに、マサカズがその時言っていた「McKINLEYのルーツの意味」が少し解ってもらえたようだった。