彼等は気付いていた。
ひとりの天才的なアーティストが全世界のイメージを表現できる時代は終わった。
世界のイメージは1人の天才の手にあまる。
それが、現代という難しさだ。
都心の喧騒。
青に変わった信号で、思い思いの方向に、一斉に歩き始める人の群。
意味も目的も理解できない赤く光る広告。
駅を出て目の前にいくつもある大きなビジョンから、同時に流れた彼等の歌。
空から降って来たコウヤの声、マサカズのギター。
信号が赤に変わり、「McKINLEY」の音と映像に、足を止めた人々が少し逸脱した瞬間と空気を感じている。
世間での評価と裏腹に、彼等2人は半ば躊躇していた。
自分達の歩むべく道は本当にこれで良いのだろうか?
何かを間違ってやしないか?
嵐はすぐそこまで来ていた。
そして今。
2人は新並木橋の上から、沈鬱に流れる水を見ていた。
コウヤが言った。
「おいら、旅に出るよ。」
マサカズは驚くこともなく彼の言葉を聞いた。
笑顔で応えるマサカズを見て、コウヤは安堵の表情を浮かべた。
そう、俺たちは評価を求めているんじゃない。
今を、この時を生きていたいんだ。
陽は沈みかけていた。
川面は静かに光を放ち、2人の顔を照らしていた。
「今日は”J”に行こう。みんなが待ってるよ。」
マサカズはそう言ってギターケースを抱えた。
彼等は久し振りに電車に乗って、懐かしい街まで行くことにした。
彼等は、二人が出会ったこの場所で、昔のように唄を歌った。
この歌がこの瞬間の、コウヤとマサカズの心の全てだった。
翌日。
あらゆる新聞の一面には、太文字でこう書かれていた。
『McKINLEY解散! 』


