マサカズとコウヤは、洞穴バー「J」で知り合った。

自分達が同志であることを感じ取った彼等は、いつの間にか無二の親友となっていった。

彼等の「伝説」とも表現できるこの町での様々なエピソードは、今でも巷で語り草となっている。そしてそんな彼等を、いつしか人はこう呼んだ。

McKINLEY【マッキンリー】。

そんな2人が同じアパートに住むようになったのはごくごく自然な流れであった。都心に遠いとも言えないが近いともいいにくい、この場所に住むようになったのも、音楽を生業としている2人故であった。

冬になると息も白くなるぼろアパートでの生活。朝になれば、壁の隙間から日差しが入り、梅雨の時期には茸類が胞子整形をなす。衛生的には少々難があるものの、彼らはここで安らぎ、ここで夢を見て、ここで歌った。

「僕らが間接的にも言いたいことを、聞く人に共感してもらえたら、共鳴してもらえたら、その瞬間はその人も解放されるんじゃないか」と、信じていた。

「……たくさんの人が解放されたらいいね」

都心のビル群に沈む夕日を見ながらコウヤが言った。

彼は歌うことによって解放される。それはマサカズの奏でるギターも同じであった。滲み出る気持ちを精一杯音にのせ、願いをこめてこの歌を歌う。

毎日、彼等は路上で歌っていた。
道行く人々は、コウヤの一種独特な個性に惹かれ、マサカズの如何ともし難い風貌に心を許し、その場を離れることが出来なかった。

多くの人々の心を掴んだ彼等は、確実に、一歩一歩人の眼に触れる道、スターダムへとのし上がっていった。

彼等の意志とは関係なく。