とある雑誌より

『McKINLEY』の名前が人々の前にあらわれたのは、テレビの音楽番組が最初だった。放送の終了を待たずに局の電話が一斉に鳴り出した。

――あの歌手は一体何者だ?――

そういう視聴者からの問い合わせで、電話回線がパンクする程だった。

もはや伝説として語り継がれているあの番組でのあの一曲。これがMcKINLEYの名を不動のものとする。ただ一度きりの放送だったが、McKINLEYが世間に認められるには、その一度で十分だった。

出すシングルはどれもミリオンセラー。
アルバムは世界中で販売され、海賊版まで出回った。
あらゆるメディアがMcKINLEYを取り上げる。
マスコミはこぞってMcKINLEYの特集を組む。
ラジオやテレビにMcKINLEYの曲が流れない日は無く、どこの街角からもMcKINLEYの歌声が流れてくる。まさしく世の中は、McKINLEY一色に染まってしまったかのようだった。

一方、彼等の人生はまさしく破綻そのものだった。だが、そこまで破滅的に生きていたからこそ、McKINLEYの歌には他の歌手には無い深みがあった。故に人々はMcKINLEYの歌に熱狂した。破天荒に生きた男たち、McKINLEYには、その破天荒さゆえに、不思議な魅力があったのである。

しかし。
McKINLEY自身はスターの座にいて幸せだっただろうか?我々マスコミは音楽の魅力を余すことなく伝えることより、彼らの持つスター性にばかり囚われていた。人々が、マスコミの作り出す虚像に熱中すればするほど、McKINLEYとの実像とのギャップは大きくなっていく。いつしか2人は、「ミュージシャン・McKINLEY」としてではなく、「スター・McKINKLEY」として振る舞い、生きることを期待されるようになった。

そんなる日、McKINLEYは私たちの前から姿を消した。
現れた時と同じように、突然に。

こうしてみると、やはり夢だったのかとも思えてくるようなあの頃。あの空気。もしかすると、寂れたバーの酔いつぶれた客たちや煙草の煙の向こうから、ふらっとMcKINLEYの2人が入ってきて、歌いだしそうな幻覚に襲われる時すらある。

生きているのか、死んでしまったのか、それすらも定かではない。

でも、私は信じていたい。
どこかの街角で、あの頃のように安い酒でも飲んだくれて歌っているに違いないMcKINLEYを。

――McKINLEY。 あなたたちを、世界は待っている。